(本記事は飲食中にはお読みにならないようにお願いします。)
BBC News Japanによれば、米紙ワシントン・ポストは11日、トランプ大統領が米国への移民の出身国について、次のような発言をしたと伝えた。
それがこちら↓
肥溜めみたいな国からなんであんなにやってくるんだ
いわゆる「便所のような国」発言である。
目次
トランプ大統領の「便所のような国」発言の原文は?
この発言はアメリカの現役大統領という高い立場にある公人が、公の場での使用がはばかられるような汚い言葉を使った、と話題になった。
私は、どの単語を使ったら「便所のような」国という訳になるのか、気になって仕方がなかった。
そこで原文を調べてみた。
原文はこれだった。↓
Why are we having all these people from shithole countries come here?” Mr Trump reportedly asked lawmakers during talks on an immigration deal. 出典
原文に忠実に訳すならば、次のようになるだろう。
なぜ、糞穴(野外便所・肥溜め)の国々からここ(アメリカ)に来るこんなにたくさんの人々がいるのだろうか。
問題となっているのは、上記発言中、黄色でマーカーされている部分だ。
BBCによれば、トランプ大統領は、ハイチ、エルサルバドルとアフリカの国々を指して、shithole countriesと発言したという。
(原文:’He was apparently referring to Haiti, El Salvador and African countries’)
shithole という語はスラング(俗語)で「野外便所」意味する単語。
よって、英語圏では、少なくとも大人は公の場で使うことはしない。
マナー違反と認識されるからだ。
本稿では、「便所のような国」発言をめぐり、トランプ大統領の発言そのものや、品性云々、人種差別を巡る議論を取り上げるつもりはない。
そうではなくて、shitholeという言葉を、日本はじめ各国でどう訳すのかに苦慮した様子が伝わってきた。
各国でshitholeが様々に訳される様子が面白かったので、それをまとめてご紹介したい。
「shithole」(便所のような)の意味は?
今回物議をかもしている「shithole」という英語、日本語だとどのような意味になるのだろうか?
shitholeを英和辞典でひくと、劣悪な場所;粗末な建物というだいぶオブラートに包んだ表現が出てきた。
shitholeという単語自体が載っていない辞書も少なくなかった。
shitholeという語はもともと、shitとholeが合体した語であるので、この2語をばらしてみる。
shit(大便・糞) + hole(穴) = 「大便(糞)の穴」=「肥溜め、野外便所」という訳に至る。
「便所のような」(shithole)という表現は、私たちが家で外出先で使う「トイレ」とは違う。
「トイレ」は英語だとtoiletやlavatoryという言葉がある。
用を足す所だが、用を足すが、使用後に洗浄するので、「肥溜め・野外便所」みたいに溜め置く場所ではない。
よって不潔な場所とは一概に言えないだろう。
しかし、shitholeは英語圏の人々にとっては、shit(大便)を溜めておく場所(hole)というイメージなのではないかな?と私は類推した。
そういう意味では、トイレのように清掃されてはいない不潔な場所ということになる。
これは文化圏の違いなのだろうか?
日本人である私がshitholeと聞いて直訳したのは「肛門」という単語だった。
なぜなら、shit(大便)のhole(穴)=肛門 と解釈したからだ。
しかし、肛門を表す英語には「anal」という語があるのは知っていた。
だから、肛門を表現したいなら、analを使うと想像できる。
だから、shitholeは「肛門」以外の意味で使っているだろうというところに落ち着いた。
さて、shitholeの用法がわかったところで、各国の訳を見ていこう。
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「便所(肥溜め)のような国」:日本ではどう訳した?
NHK:「不潔な国」(現在NHK News Webの記事は削除、閲覧不可。)
時事通信:「便所のような国」
BBC日本語版サイト:「肥溜めみたいな国」
TV朝日:「屋外便所のような国々」
産経「野外便所のように汚い国」
ハフィントンポスト:「汚い便所のような国」 (出典1、出典2)
どこも、NHKと同様の訳である。
比較的な意味では、原文に忠実な、でも読み手への配慮のある訳と言えるだろう。
「便所のような国」:アジアではどう訳した?
- 韓国「物乞いの巣窟」
韓国メディアの多くは、「物乞いの巣窟」と伝えた。
同国最大の通信社である聯合(Yonhap)ニュースに倣ったようだ。
- 台湾「鳥が卵を産まない」
台湾の中央通信社(CNA)で、「鳥不生蛋国家(鳥が卵を産まない国家)」と伝えた。
かなり婉曲(遠回し)な表現である。
- ベトナム「腐った」
ベトナムのメディアでは、「汚い国」「ごみの国」「腐った国」など、さまざまな種類の言葉が使われている。
この言葉の適切な訳語に苦労したのだろう。
- 中国「悪い国」
中国共産党の機関紙・人民日報(People’s Daily)の海外版は、「燗国家(悪い国家)」と訳した。
- フィリピン「shithole」
フィリピンメディアは、同国のロドリゴ・ドゥテルテ大統領の暴言に慣れてきているせいか(?)「shithole」という単語をそのまま見出しに使った(Philippine Star紙)。
ちなみにフィリピンメディアは英語での報道が一般的である。
- タイ語放送(米国営ラジオ放送局) 「排せつ物の穴」
米国営ラジオ放送局ボイス・オブ・アメリカ(Voice of America)のタイ語放送は、「この英単語は『排せつ物の穴』と訳すことができ」と放送した。
「便所のような国」:ヨーロッパ諸国ではどう訳した?
- ギリシャメディア「掘込み便所」
- イタリアメディア「尻の穴国家」
- オーストリアメディア「ごみの穴」
- フランス、スペイン、ポルトガル「くそ国家」と訳されている。
「穴」(hole)という表現自体がなくなっている。
- ベルギー「睾丸国家」
shitholeはどこにいったのだろう?全く違う体の部位に変わってしまった!
ベルギーのフラマン語メディアは、現地語でよく使われる侮蔑表現を「睾丸国家」という言葉を訳語にあてたようだ。
- ドイツ「汚い穴」
- セルビア「オオカミが交尾する場所」
セルビアのメディアは、自然界から借用した現地語の慣用句を用いた。
- チェコ「汚い穴」
- ルーマニア「豚小屋」
さいごに・・・
shitholeの訳語は、国によって解釈が異なることがわかる。
それは、非常に面白く、興味深いものだった。
トランプ大統領のshitholeが意図する「穴」は、一体どの「穴」を示すのかについて、各国の解釈にばらつきが出た。
個人的には、次の2つの国の訳語が的確であるように感じた。
- イタリアメディア「尻の穴国家」
- ロシア「臭い穴」
これらがよい言葉と言っているのではない。
だが、shitholeの訳語としては、わかりやすく、原語に忠実な訳と言えるのではないか!?
ただ、いまだに私はトランプ大統領がshitholeという単語をもって、ハイチ、エルサルバドル、アフリカの国々を表現しようとしていた真意はさっぱりわからない(笑)。
日ごろ使っている言葉が、公の場でも出てしまったのでは(?)という人もいるようだ・・・
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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