高校の授業が暗記中心になっているのは問題だとして、高校と大学の教員らで作る「高大連携歴史教育研究会」(会長=油井大三郎・東京大名誉教授)が用語の精選案を発表した。

研究会には歴史教科書の執筆者や、中央教育審議会の部会で学習指導要領の作成に携わる専門家ら約400人が加わっている。

同研究会は・・・

「教科書の本文に載せ、知識を入試で問う用語を現在の3500語程度から約半分にすべきだ」としている。

歴史用語を半分にする背景には何があるのだろうか?

歴史用語削減の背景

今回の歴史用語削減の背景には、2つの理由があるようだ。

増え続ける歴史用語

1つ目は高校の歴史授業で学ぶ用語が多すぎることである。

同研究会によれば・・・

現在の高校の主要歴史教科書は世界史B、日本史Bともに約3400~約3800語が載っている。

1950年代と比べて3倍近くになっている。

なぜ、この60年余りで歴史用語は3倍にも増えたのだろうか?

その理由は、大学入試が関係しているのだという。

大学入試で教科書に載っていない、細かい史実を問う問題が出されると、その用語が次の改訂で教科書に掲載され、用語が増える傾向が続いてきたためだという(出典)。

一方で、高校の授業のコマ数を考えると、きちんと教えられる用語は2千語強という。

よって、約3400~約3800語はとても教えきれない訳である。

半分にする理由はここにあるのだ。

脱暗記:暗記から思考力・表現力重視へ

2つ目は大学入試で暗記より思考力や表現力を重視する大学が出ていることだ。

大学入試センター試験の後継として2020年度から始まる「大学入学共通テスト」でもこうした力を問う方針だというから、脱「暗記」の傾向に向かっていることがわかる。

削除される用語・加わる用語

ここで気になるのは、どんな用語が削除され、新たに加えられる用語はあるのかということだろう。

その選択基準も知りたいところではある。

 

同研究会は用語精選の基準として、「歴史の流れを理解するために必要な言葉」を中心に精選するという。

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共同体」「史料批判」など概念の用語や、現代的課題につながる「気候変動」「グローバル化」といった語句が加わる。

一方、「クレオパトラ」「ガリレオ・ガリレイ」「武田信玄」「上杉謙信」「吉田松陰」「坂本龍馬」などは「実際の歴史上の役割や意味が大きくない」などとして削られた。

<高大連携歴史教育研究会が「教科書本文から削るべきだ」と提案した歴史用語の例>

 【世界史】

エジプト古王国・中王国・新王国/リキニウス・セクスティウス法/クレオパトラ/カノッサの屈辱/性即理・心即理/『金瓶梅』/ガリレオ・ガリレイ/プラッシーの戦い/ミュール紡績機/第1回大陸会議/マリー・アントワネット/立法議会・国民公会/ロベスピエール/ワーテルローの戦い/第1・第2インターナショナル

【日本史】

中宮寺半跏思惟(はんかしい)像/国分寺建立の詔(みことのり)/不輸・不入の権/鹿ケ谷の陰謀/時宗(仏教宗派)/武田信玄上杉謙信/桶狭間の戦い/中山道・甲州街道・奥州街道・日光街道/大岡忠相/千歯扱(こ)き、備中鍬(ぐわ)/吉田松陰坂本龍馬ジーメンス事件/五日市憲法草案/旅順占領 (出典)。

同研究会運営委員長の桃木至朗・大阪大教授(東洋史学)は

「精選案は全員に覚えさせ、入試で知識を問う基準。教科書や入試で図表や資料として示す用語はもっと多様であってよい」と話す。

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さいごに・・・

個人的には暗記重視の入試よりも思考力や表現力を問う入試の方が賛成である。

しかしながら、上記桃木至朗大阪大教授の

精選案は全員に覚えさせ、入試で知識を問う」とする基準には、用語を減らしてもやはり「暗記」なのか!?と残念に思う。

イギリスの私立小学校では9歳の子供が

戦争はするべきか?しないべきか?

というテーマでエッセイを書いていることを考えると。・・・

自分の意見を問われる問題が日本で出てくるのはいつのことやら・・・・・・?